水害にあったときに(冊子版)Web公開版(2022年9月) 震災がつなぐ全国ネットワーク・編 2ページ はじめに - 水害にあってしまったら  このたびの被災に際し、心からお見舞い申し上げます。  この冊子では、過去の水害で被災した方々の経験から、水害にあった方がしなくてはならないことをまとめました。  残念ながら、一度水害にあってしまうと元の生活を取り戻すにはしばらく時間がかかります。かたづけや様々な手続きなどが続きますが、あなたやご家族の心身の疲れが大きくならないように、ゆっくりと、無理のないペースで進めましょう。  被災地には、家のかたづけを手伝うボランティアや、避難所での生活を支えてくれるNPO、お金や家の相談にのってくれる弁護士など多くの人が駆けつけ、元の生活に戻る力になってくれます。また、被災された方を支える公的制度も多数あります。  こんなときは、遠慮なく周りに助けを求め、他の人の力を借りてもよいのです。がんばりすぎず、あきらめないで、少しずつ生活を取り戻しましょう。 2017年3月 震災がつなぐ全国ネットワーク ※私たち「震災がつなぐ全国ネットワーク」は、阪神・淡路大震災(1995)以降、数々の被災地で支援活動を行ってきた41団体(2022年9月現在)のNPOやボランティア団体からなるネットワーク組織です。 3ページ もくじ はじめに - 水害にあってしまったら  2ページ 1.まずは落ちついて  4ページ 1-1 生活再建までの見通しをたてる  4ページ 1-2 仮住まいの場を決める  5ページ 1-3 生活を支えてくれる人に助けを求める  7ページ 1-4 心や体の回復に努める  7ページ 2.必要な手続き  8ページ 2-1 公的な支援を受けるための手順 2-2 罹災証明書の発行を申請する  9ページ 2-3 住家被害認定の調査を受ける  9ページ 2-4 被災したときに受けられる支援制度を活用する  11ページ 2-5 支払いの猶予や減免を受ける  13ページ 2-6 保険会社に連絡する  13ページ 2-7 その他の手続き - 相談窓口を積極的に使う  13ページ 3.家屋のかたづけと掃除  15ページ 3-1 被害状況を写真に撮る  16ページ 3-2 ぬれてしまった家具や家電をかたづける  17ページ 3-3 床下に泥や水がたまっていないか確認する  20ページ 3-4 床下を掃除し、泥を除去する  22ページ 3-5 カビを防ぎ、床下を乾燥させる  23ページ 3-6 電気・水道・ガスが復旧する前に  25ページ 4.水害からの生活改善「私の場合」  26ページ 4-1 水害直後に困ったことはなんですか?  26ページ 4-2 住まいが決まるまで何をしましたか?  27ページ 4-3 家のかたづけはどうされましたか?   28ページ 4-4 ボランティアを頼んでみてどうでしたか?  28ページ 4-5 被災後の集落はどうなりましたか?  29ページ 4-6 農家の場合  29ページ 4ページ 1.まずは落ちついて 1-1 生活再建までの見通しをたてる  自宅が水に浸かってしまうと、家のかたづけや修理をしなければならず、場合によっては別の場所への引っ越しを考えなければなりません。次の生活拠点に落ちつくまでの時間はそれぞれ異なりますが、過去の水害では被害の軽い方で1か月、長い方では1年以上かかった場合もありました。その他、下記のような条件で生活再建までの時間が変わってきます。 1-1-1 被災の規模 ●大きな水害では近くの施工業者に修理の注文が殺到し時間がかかります。 ●一方、多くの人が被災すると災害救助法が適用され、仮設住宅や、各種の支援制度が準備されることが多いです。 1-1-2 土砂の量 ●住宅に流れ込む土砂の量が多いと、修理に時間がかかります。 また、自宅を修理する場合、修繕に入る前に家屋を乾燥させる時間が必要です。実際にかかる時間は被災の度合いや住宅の条件によって異なります。 1-1-3 乾燥の時間 ●家屋の床下部分を中心に可能な限り乾燥させます(目安として最低1か月)。十分に乾燥させないと、後で床下や壁裏などにカビや悪臭が発生し、生活に支障が出ます。 1-1-4 修繕期間 ●工務店や施工業者に修繕の依頼が殺到するため、過去の水害では半年以上待たされた場合もありました。 5ページ 1-2 仮住まいの場を決める  自宅を修理する場合、再度住めるようになるまでの間、被災した自宅の2階以上で暮らすか、仮住まいの場に移る必要があります。また、別の場所に引っ越す場合にも、家が決まるまで一時的な避難の場が必要です。 避難の場、仮住まいの場としては以下のような選択肢があり、それぞれに長所と短所があります。 1-2-1 すぐに移れる避難の場の例(被災直後から数ヶ月の間) 表があります。 6種類の場所(①~⑥)別にメリット(長所)・デメリット(短所)を示します。 ① 自宅の2階以上, メリット:・残った家具や家電が使える ・プライバシーが確保できる ・気分的に落ち着く ・周囲に気を遣わずに生活できる, デメリット:・風呂やトイレ、洗面所が被災していると、水回りが使えない ・上下水道・電気・ガスも使えないことがある ・支援物資や情報が届きづらい ② 車中・テント泊, メリット:・プライバシーが確保できる ・通勤や買い物などの移動がしやすい ・自宅敷地内または近くで寝泊まりできる, デメリット:・狭い ・エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症/肺塞栓症)などになりやすい ・支援物資や情報が届きづらい ・お風呂・トイレがない ③ 指定避難所, メリット:・最低限の生活に必要な物資 ・食料が提供される ・情報が届きやすい ・話し相手がいる, デメリット:・プライバシーが確保できないことがある ・周囲に気を遣う ・生活環境が悪いことがある ・様々なルールや制約がある ④ 指定外避難所, メリット:・話し相手がいる・指定避難所に比べると一人あたりのスペースにゆとりがあることが多い, デメリット:・プライバシーが確保できないことがある ・周囲に気を遣う ・支援物資や情報が届きづらい ⑤ 実家・友人・親戚宅, メリット:・プライバシーが比較的確保できる ・水道・電気・ガスが使える ・話し相手がいる, デメリット:・家主や住人に気を遣う ・支援物資が受け取れないことが多い ・情報が届きづらい ⑥ ホテル・旅館(自主避難), メリット:・プライバシーが確保できる ・水道・電気が使える ・風呂やトイレが使える, デメリット:・お金がかかる ・支援物資が受け取れないことが多い ・情報が届きづらい ・孤立することがある 表、終わり 6ページ  災害救助法が適用された場合、公的な支援制度を使って仮設住宅などに入居すると情報も得られ経済的な負担も軽くなりますが、プライバシーの確保や自由度は低くなります。一方、自己資金で仮の住まいを選ぶと融通はききますが、被災者向けの情報が入りにくかったり、経済的負担が大きくなったりします。 おおむね発災1週間後(上下水道・電気・ガスが使えるようになってから)以降に移れる仮住まいの場の例(被災後数年まで) 表があります 5種類の場所別にメリット(長所)・デメリット(短所)を示します。 ① 災害救助法適用の場合の建設型仮設住宅, メリット:・被災者がまとまって住んでいる ・家賃がかからない ・家族で一緒に住める ・支援や情報が届きやすい, デメリット:・立地が不便なことが多い ・狭い ・場所、間取りを選べない ・壁が薄く、近隣に気を遣う ・大家族の場合世帯をわけて住む可能性がある ・ルールや制約がある ② 災害救助法適用の場合の借上型仮設住宅, メリット:・既設の住宅に入れる ・家賃がかからない ・家族で一緒に住める ・ある程度自分の好きな場所や間取りが選べる, デメリット:・情報や支援が届きづらい ・元の居住地から離れてしまう ・近所になじむまで時間がかかる ※借上型仮設住宅:仮設住宅に準じて市町村が借り上げる民間賃貸住宅(みなし仮設) ③ 公営住宅, メリット:・家賃がかからない ・家族で一緒に住める, デメリット:・無償で住める期間がまちまち ・築年数が古いことが多い ・好きな場所や間取りが選べない ・元の居住地の情報が得られないことが多い ・支援が届きづらい ・近所になじむまで時間がかかる ④ 実家・親戚宅, メリット:・家族で一緒に住める ・話し相手がいる, デメリット:・家主や住人に気を遣う ・支援物資を受け取れないことが多い ・情報が届きづらい ⑤ 賃貸住宅, メリット:・家族で一緒に住める ・自分の好きな場所や間取りが選べる, デメリット:・引っ越し代がかかる ・家賃(敷金、礼金含む)がかかる ・支援物資や情報が届かない 7ページ 1-3 生活を支えてくれる人に助けを求める ●大きな災害が起こると、社会福祉協議会などに「災害ボランティアセンター」が設置されます。 ●災害ボランティアセンターにお願いすると、家のかたづけや泥出しをするボランティアが来てくれます。(依頼件数が多いとボランティアが来るまでに時間がかかることもあります) ●ボランティアにお金はかかりません。お金の支払いを求められたときは、市町村や社会福祉協議会に確認を取りましょう。 ●かたづけのボランティア以外にも、ペットの一時預かり、アレルギーを持つ方の食事、送迎や洗濯、避難所の環境改善、通訳や相談、マッサージなど専門的な支援をする団体が入ることもあります。支援団体は、避難所にチラシをはったり、見回りをしながら困りごとの声を集めます。避難所が少し落ち着いてくるとサロンや足湯などが行われることがあります。 ●そんな場所を見つけたら、一息つきながら今感じていることを話してみましょう。誰かに話すことで気持ちが少し落ち着いたり、「こんな活動、物資、情報はないでしょうか」と聞いてみると、災害関連団体のネットワークを通じて、役に立つ情報や支援が得られることもあります。 イラストがあります(イラスト1) イラストの中の文字 足湯でほっこり 思ったより体は疲れている イラスト、終わり 1-4 心や体の回復に努める ●水害にあうことはつらい体験です。心や体が不調になることもあります。多くは自然に回復しますが、つらい思いを人に話すと早い回復につながります。 ●お友達、ボランティアや巡回の保健師などに話を聞いてもらいましょう。 ●子どもなど家族の変化にも気をつけましょう。 8ページ 2.必要な手続き  水害にあうと、被災当時住んでいた住居の被害程度により、様々な公的支援を受けることができます。支援を受けるために、罹災(りさい)証明書という書類が必要になりますので、まずはお住いの市町村に申し出(申請)をして罹災証明書の交付を受けます。 保険や共済に加入している場合は保険金請求の連絡も行います(P.13参照 2-9 火災保険の適用)。  わからないことを相談できる窓口が開かれることが多いので、小さなことでも遠慮なく相談しましょう。 2-1 公的な支援を受けるための手順 流れ図(図1)があります。流れを ①から④へと記載します。 ① 市役所・町村役場に浸水を申し出る  ポイント P.9 大規模な災害では全戸調査が行われる ② 住家被害認定の調査を受ける  ポイント P.9 1回目の調査は目視で、2回目以降はくわしい損傷率の確認が行われる。↓ 調査結果に不服・疑問 の有無   ある → 再調査を依頼 →②へ戻る   ない → ③へ ③ 罹災証明書の交付を受ける ポイント P.9 水害の規模や再調査の件数によっては発行までに数週間から1か月以上かかる ④ 被害認定に応じて各種の支援を活用する ポイント P.11 被害認定や住宅の再建方法、収入などによって使える制度、支給額が異なる 図、終わり 9ページ 2-2 罹災《りさい》証明書の発行を申請する ●市役所・町村役場に自宅が浸水したことを申し出て(申請して)、罹災証明書を発行してもらいます。罹災証明書とは住家(人が住むための建物)が被災した場合に、その被害程度を証明するものです。 ●被害を申し出ると、市町村職員による被害調査が行われ、罹災証明書が発行されます。 ●大規模な水害では申し出がなくとも全戸調査が行われることがあります●罹災証明書の発行までには数週間から1か月以上かかることもあります。 ●罹災証明書に書かれた被害認定に応じ、被災者生活再建支援金が支給されます。また、義援金の配分や、税、保険料、公共料金などの減免が受けられる場合があります。災害救助法に基づく応急仮設住宅への入居や、住宅の応急修理制度が使える場合もあります。 ●被害認定の判定に不服や疑問がある場合には再調査の申請ができます。写真などで被災状況を記録しておくことも重要です。 ●納屋や車庫などの非住家(住居ではない建物)の損害に対しては被災《ひさい》証明書が発行されることもあります。7 2-3 住家被害認定の調査を受ける ●市町村職員や応援の自治体職員が損害程度を判定する調査に訪れます。 ●水害の場合、泥流など建物に外からの力が作用して損傷している場合は、第1次調査が行われますが、内水氾濫など、外からの力による建物の損傷がない場合や、戸建ての1~2階建て以外の建物の場合は、第2次調査から行われます。 ●第1次調査は、外からの目視で損傷や浸水深(浸水の深さ)を確認し、一定の基準のもと損害割合を算定します。 ●第2次調査は、目視に加えて住家の傾きや柱、外壁、内壁、床、基礎など、家の部位ごとの損傷率を確認し、一定の基準のもと損害割合を算定します。 ●第1次調査の判定に疑問がある場合には、第2次調査を申請することができます。また、第2次調査の判定に疑問がある場合には、再調査を申請することができます。 ●算出された損害割合(p11上表)によって判定がなされ、被害認定となります。 【参考】http://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/r203kaitei.pdf QRコードがあります 10ページ 2-3-1 被害認定の目安(木造の戸建住宅の場合) ●実際の被害認定は、外観の他に、家の傾き、浸水の深さ、柱や床といった家屋の部位ごとの損壊割合など、一定の基準のもとに行われます。 ●被害認定調査についての詳細は、内閣府のWebサイト上のページ「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」に掲載ざれています。 http://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/r303shishin_3.pdf http://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/r305shishin_2.pdf http://www・bousai・go・jp/taisaku/pdf/r30shinshin_kaitei.pdf(2021年3月改定) 図があります。図2 1.河川の氾濫などで浸水した場合の基準 ※木造・プレハブ住家の場合 ※あくまで目安です (1)条件 水流や漂流物などにより一定程度の損傷がある場合 浸水した箇所のもっとも浅い部分が、 床上浸水 ① 全壊 床上180cm以上 ② 大規模半壊 床上100cm以上 180cm未満 ③ 中規模半壊 床上50cm以上 100cm未満 ④ 半壊 床上50cm未満 床下浸水 ⑤ 一部損壊 住宅の基礎の天端《てんば》より上まで 2.土砂崩れなどで、住家および周辺に一様に土砂などが堆積した場合の基準 床上浸水 ① 全壊 床上100cm以上 ② 大規模半壊 床の高さまで堆積 ③ 半壊 住宅の基礎の天端《てんば》下25cmまでのすべての部分に堆積 ※状況や家屋によって異なる場合もあるため、目安として参照してください。 図おわり 11ページ (2)条件 水流や漂流物などにより一定程度の損傷がない場合 ※あくまで目安です 部位ごとの損傷率に、部位別構成比を乗じて算出します。 表があります 住家の損害割合と被害区分 50%以上 全壊 40%以上50%未満 大規模半壊 30%以上40%未満 中規模半壊 20%以上30%未満 半壊 10%以上20%未満 準半壊 10%未満 準半壊に至らない(一部損壊)表の終わり 表があります 木造・プレハブ住家の部位別構成比 屋根 15% 柱(又は耐力壁) 15% 床(階段を含む) 10% 内壁 10% 外壁 10% 天井 5% 建具(窓、戸、障子など) 15% 基礎 10% 設備(システムキッチン、便器など) 10% 表の終わり 計算例 部位の損傷率x部位別構成比=部位別損害割合 床の損傷程度50%x10%=5% 建具の損傷程度50%x15%=7.5% これらの部位ごとの割合の合計→被害区分 5%+7.5%=12.5%→10%以上→「準半壊」 2-4 被災したときに受けられる支援制度を活用する(2022年9月現在) 罹災証明書が発行されると被害認定に応じて以下のような支援を受けられる可能性があります。くわしくは市町村に確認しましょう。 2-4-1 被災者生活再建支援金(被災者生活再建支援法が適用された場合) 表があります ① 全壊、②解体、③長期避難では、基礎支援金(住宅の被害程度)はいずれも100万円。 加算支援金(住宅の再建方法として)は、建築・購入であれば200万円で、合計300万円 加算支援金が補修の場合は100万円で、合計200万円 加算支援金が賃貸(公営住宅を除く)の場合は50万円で、合計150万円 ④大規模半壊は、基礎支援金は50万円。 加算支援金は、建築・購入であれば200万円で、合計250万円 加算支援金が補修の場合は100万円で、合計150万円 加算支援金が賃貸(公営住宅を除く)の場合は50万円で、合計100万円 ⑤中規模半壊は、基本支援金はなし。 加算支援金は、建築・購入であれば100万円で、合計100万円 加算支援金が補修の場合は50万円で、合計50万円 加算支援金が賃貸(公営住宅を除く)の場合は25万円で、合計25万円 ※世帯人数が1人の場合は、各該当欄の4分の3の額 ②解体:住宅が半壊以上の判定、または住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯 ③長期避難:災害による危険な状態が継続し、居住できない状態が長期継続している世帯 表終わり 12ページ 2-4-2 住宅の応急修理制度(災害救助法が適用された場合) ●住宅が準半壊以上に被害認定され、修理期間(発災から6ヵ月間以内)以外は仮設住宅を利用しない場合、1世帯あたり65万5千円(準半壊は31万8千円)を限度に修理の補助が受けられます。(2022年9月現在)※全壊の場合、原則対象外ですが、応急修理を実施することで居住が可能になる場合は対象になります。 ●自宅の屋根、居室、台所、トイレなどの日常生活に必要な最小限度の部分の応急修理の補助が受けられます。 ●業者に費用を支払う前に市町村に申請します。制度対象になる業者か、事前に確認しましょう。工事費用は市町村が直接業者に支払います。 ●準半壊・半壊の場合は、自らの資力で応急修理をすることができないことを申請する必要があります。 ●賃貸住宅の場合は、まず家主(大家さん)に相談しましょう。 2-4-3 災害弔慰金・災害障害見舞金 ●災害により死亡した方のご遺族に対し「災害弔慰金」が、災害により精神または身体に著しい障害を受けた方に「災害障害見舞金」が支払われます。 ●災害で直接亡くなった場合だけでなく、その後災害の影響で亡くなった「災害関連死」の場合も支払われます。 ●災害弔慰金は最大500万円(生計維持者以外の死亡の場合250万円)、災害障害見舞金は最大250万円(生計維持者以外の場合125万円)です。 2-4-4 義援金(全国からの寄付の配分) ●義援金が集まった場合には、自治体を通じて被災者や被災世帯などに配分されます。現金(振込)で支払われます。 ●配分が決まるまで数カ月を要するため、災害直後に配分額はわかりません。 2-4-5 都道府県や市町村独自の見舞金制度 ●都道府県や市町村が被災世帯への独自の支援金を交付することがあります。 13ページ 2-5 支払いの猶予や減免を受ける ●災害後には、所得税、固定資産税、健康保険料、上下水道代、電気代、ガス代、固定電話代、携帯電話代、NHK受信料、各種保険料・掛け金、その他公共料金などについて、支払を先延ばしする「支払猶予」や、減額・免除できる「支払減免」措置を受けられる可能性があります。 ●罹災証明書がなくても、猶予や減免を受けられる場合もあります。それぞれの窓口へ問い合わせましょう。 2-6 保険会社に連絡する 2-6-1 火災保険 ●自宅が火災保険や共済に加入しているときは、担当者に連絡しましょう。 ●保険証券をなくし、どの保険会社からどのような支援を受けられるかわからないときは下記へ問い合わせましょう。   自然災害損保契約照会センター   (一般社団法人日本損害保険協会内)   電話:0120-501331(無料)     0570-001830(ナビダイヤル・通話料有料)     03-6836-1003(一部のIP電話などからの場合・通話料有料)   土日祝・年末年始のぞく 9:15~17:00 2-6-2 自動車保険 ●水害で自動車が水没などした場合、「車両保険」に加入していれば補償される可能性があります。保険会社へ問い合わせましょう。 2-7 その他の手続き 一 相談窓口を積極的に使う  大きな水害の被災地では、市町村やハローワーク、中小企業関係、弁護士会などが無料の相談窓口をしばしば開設します。小さなことでも相談して負担を少なくする方法を探しましょう。 14ページ 2-7-1 印鑑・権利証・保険証などの紛失 ●不動産の権利証(登記済証)を紛失しても権利を失うことはありませんので、安心してください。 ●通帳・キャッシュカード・実印などを紛失しても、改めて手続きを行うことで再発行できます。過去の大きな災害では、キャッシュカードや通帳がなくても緊急でお金をおろすことができる取扱いもありました。 ●健康保険証がなくても災害救助法に基づき医療を受けることができます。 ●まずは金融機関、医療機関、市町村の窓口に問い合わせましょう。 2-7-2 ローンの支払い・借金に困ったら ●手元に一定の預貯金を残しながら住宅ローンや個人事業ローンの減免を受けられる「被災ローン減免制度」を利用できる場合があります。 ●このローン減免手続きを定めた「自然災害債務整理ガイドライン」では、手元に一定の資金を残しながら、それ以外の財産を返済に回してなお支払が困難な場合、残ったローンを減免できることになっています。「破産」のように信用情報(ブラックリスト)に登録されることがなく、連帯保証人へも原則請求がないなど、メリットが非常に大きい制度です。 ●支払いについて、まずはメインバンクなどに相談し、弁護士による無料法律相談などのサポートを得ながら、制度が利用できるかを検討することが重要です。 2-7-3 雑損控除(翌年の確定申告) ●所得税の確定申告を行う際の所得控除(例=医療費控除)の一つに雑損控除があります。災害で家や生活に必要な資産が損害を受けた場合に、その損害額の一部を所得から差し引ける制度です。損害額が大きい場合、所得税の減免免除が受けられる場合もあります。 ●くわしくは最寄りの税務署に相談しましょう。 15ページ 3.家屋のかたづけと掃除  水に浸かってしまった家をきれいにするのは大変な仕事です。また、上下水道や電気、ガスが復旧していないと、思うように掃除も進みません。疲れもたまっているので、かたづけはボランティアなどの力も借りながら、徐々に無理をせず行いましょう。 家屋修復までの一般的な手順 流れ図(図3)があります。流れを①から⑦へと記載します。 ① 被害状況を写真に撮る  ポイント P.16 罹災証明書の発行や保険で必要 ② 浸水の深さは?  床上まで ③へ             床下のみ ④へ ③ ぬれた家具をかたづける  ④へ  ポイント P.17 あわてて何でも捨てない。ボランティアに頼 める ④ 床下に泥や水は?  溜まっている ⑤へ  ポイント P.20 家の造りによって確認の方法が違う           溜まっていない ⑦へ ⑤ 泥や水を除去  ⑥へ  ポイント P.22 早く済ませないとカビや悪臭が発生する ⑥ 乾燥・消毒  ⑦へ  ポイント P.23 時間をかけないと後でカビや悪臭が発生する ⑦ 修復 図、終わり 16ページ 3-1 被害状況を写真に撮る ●被害の様子がわかる写真を撮ります。  イラスト(イラスト2)があります  イラストの中の文字   できるだけ4方向から撮る。   浸水した深さが分かるように。 ●家屋の外を色々な角度から、浸水した深さがわかるように撮ります。  イラスト(イラスト2)の中の文字   室内の状況や家電などを撮る  イラスト、終わり ●室内の被害状況もわかるように撮ります。 ●市町村から罹災証明書を取得するときに役立ちます。また、保険金の請求にも必要です。 ●自動車、物置、納屋、農機具など屋外のもの、システムキッチンや洗面台など屋内の住宅設備、ぬれてしまった家電などの写真も撮っておきましょう。 ※ご自身が必要と思う3倍の枚数を撮影しておくことをお勧めします。 図があります 図4 図5 図6 人が立つと浸水の高さがわかりやすい 図7 浸水した車なども撮っておく 図8 室内の被害状況も撮っておく 図、終わり 17ページ 3-2 ぬれてしまった家具や家電をかたづける ●ぬれてしまった家具や家電は「そのまま使えるもの」、「乾燥させて使うもの」、「処分するもの」に分けます。 ●ボランティアセンター、市町村、社会福祉協議会に相談し、ボランティアにお手伝いに来てもらいましょう。 ●ゴミ捨ては分別が基本ですが、そのルールは市町村からチラシや災害FMラジオなどで伝えられます。使える袋の種類や捨てる場所など正しい情報を得るようにしましょう。 ●食器など洗ってまた使える物は塩素系漂白剤(「キッチンハイター」など)や、逆性石けん(ベンザルコニウム塩化物。「オスバンS」など)で消毒します。消毒液は使い方をよく読んで使いましょう。原液を素手でさわってはいけません。 図とイラストがあります。 図9 食器の分類 図10 アルバムは干しておく イラスト3   イラストの中の文字    必ず、表示どおりにうすめて使う   手袋必須  消毒薬(塩素系漂白剤や逆性石けん)は……  ●手ぶくろをする。表示どおりにうすめてつかう 図とイラスト、終わり ●家財を廃棄する場合には、お住いの自治体の分別方法を確認してから廃棄場所(仮置き場を含む)に運び込むようにしましょう。 ●特に分別の指示がない(わからない)場合には、① 木製家具類 ② 一般家電 ③ リサイクル対象家電 ④ スチール類 ⑤ 土砂や泥 ⑥ その他に分別して廃棄場所に集めることをお勧めします。 18ページ 3-2-1 そうじをするときの服装 ●肌の露出を避けた服装が基本です。絵にのっている物はホームセンターなどで買えます。 ●ホコリや砂を避け、クギや木材でケガをしないようにできるだけ肌の露出を避けましょう。 ●こまめに水分を取りましょう。休憩をとることも大切です。 イラストがあります。 イラストの中の文字  ① ヘルメットや帽子・タオル   熱中症に注意!! タオルに保冷剤を   ※気温が高くなくても汗をかいているのなら要注意  ①-1 ゴーグル 特に薬品を扱うときにはあるとよい  ② マスク  ③ ヤッケ カッパやヤッケが動きやすい  ④ ゴム手 ⑤ 中に軍手をはめるとムレにくい  ⑥ 長ぐつ  ⑦ クギなどの踏み抜き防止用インソールがあると安心  ⑧ ヘッドライトがあると床下などに便利  ⑩ 細かいそうじハブラシ  ※水分補給、うがい、手洗いは、こまめにしっかり。 イラスト、終わり 19ページ 3-2-1 こんなものはどうする? 表があります (1) 住宅の外,① 自動車・農機具,・絶対にエンジンをかけず、修理工場に連絡をする ・しばらく乗らないときは車検証とナンバーをはずしておく(盗難防止のため) ・「無料で処分する」という悪徳業者に注意 (空欄),② エアコン室外機,・しっかり乾かせば使える場合もあるが、動いても電気店に点検を依頼する (2)住宅設備・家具・家電,① システムキッチン 洗面台など,・機能に問題がなくても壁に接した裏側が乾きにくく、大量のカビの原因になる (空欄),② トイレ・風呂釜,・電気系統がぬれていなければ使える場合もある (空欄),③ ふすま・障子,・乾かすと桟や枠は使えることもある (空欄),④ 畳・じゅうたん・ふとん,・水を吸うと使えない (空欄),⑤ タンス・棚,・木材を貼り合わせた合板 ・集成材のものは乾いても後からカビが生える (空欄),⑥ 家電(冷蔵庫・洗濯機・テレビ・炊飯器など),・ぬれてしまうと使えない場合が多い ・まれに使えても、後から故障することがある ※水害後は「家電リサイクル対象品目」の処分費用が免除されることがある (3)貴重品,① 現金・通帳など,・汚れた現金は、一定の条件のもと、新しいお金に換えてもらうことができる ・災害のあとは、通帳や印鑑がなくても便宜的に支払いに応じてくれることがあるので、取引銀行や金融機関に相談する (空欄),② 携帯電話・スマートフォン,・電源を入れずに電池、SIMカード、SDカードを外し、保管する ・泥水に浸かった場合は防水型でも一度電源を切って乾燥させる ・最寄りの携帯ショップに相談する (4)その他,① 衣類・着物,・すぐに洗浄、乾燥させれば使えないことはない ・放置した着物はカビが生えやすい (空欄),② 食器,・陶磁器・プラスチック製の食器はキッチンハイター(塩素系漂白剤)で消毒すれば使える ・木製・竹製・漆器は変形してしまうこともある (空欄),③ アルバム・写真類,・濡れていても捨てる必要はない ・写真を水で洗い、干す ・すぐに洗えない場合はアルバムを広げて乾かす ・重なった写真は1枚ずつ離す。固着していたら水につけて剥がす ・カメラで写真を撮影してデータで残す手もある 表、終わり 20ページ 3-3 床下に泥や水がたまっていないか確認する  住宅が一度でも浸水したら、床下に水や泥が入り込んでいないかの確認をお勧めします。洋間(フローリングやじゅうたん敷き)の場合、点検口を増設してもらうなどして、確認をしましょう。  水や泥がたまっている場合は、早めに取り除かないと、後になってカビや悪臭が発生し、健康被害が発生する可能性が高まります。 3-3-1 和室(畳敷きの部屋) ●畳を上げ、畳の下の床板をバールなどで1枚はがす。(写真①) ●床板をはがす前に油性ペンで並び順の番号を書いておくとよい。(写真②) ●床下に水や汚泥がたまっていないかどうか確認する。(写真③) ●確認が終わったら、床板は元に戻すことができる。 ●特に無垢の床板は再利用できるのでていねいにはがす。 ●無垢の板を乾かす際は、陰干しする(直射日光は板が変形する可能性あり) 図があります 図11 和室の床板をはがす(写真①) 図12 床板に並び順を記入(写真②) 図13 床下にたまった泥(写真③) 図、終わり 21ページ 3-3-2 洋室(フローリング・じゅうたんの部屋) ●通風口や床下収納の間口から床下をのぞきこんで、水や汚泥がたまっていないかどうか確認する。 ※床下収納や点検口がない場合、工務店などに依頼して点検口を増設してもらうことをお勧めします。2~3万円ほどかかりますが、放置をするよりもはるかに家を傷めずに済みますので、できる限り床下を確認するようにしましょう。 イラストがあります イラスト7  イラストの中の文字  床下収納や通風口の間口から確認  通風口  点検口がなければ穴をあけることも  できれば、対角線上に2つ穴があけられると、乾燥が早い イラスト、終わり 図があります 図14 通風口から床下の泥を確認する 図15 水や泥がたまってしまった床下の様子 図とイラスト、終わり 22ページ 3-4 床下を掃除し、泥を除去する  時間が経つほど水分が湿気となり、カビや異臭の原因になります。できるだけ早く作業に着手するようにしましょう。 ●床下に水や泥などが入っていた場合、水を抜いてから泥を取り除く。 ●水や泥を掃除(除去)した後、床下に消毒液をまく。 ●木の部分は泥をふき取ってから消毒液をしみこませ、固く絞った雑巾などで拭いて消毒をする。 図があります 図17 図18 図19 床下の泥だしの様子 図20 床下に入るときは換気をし、2人以上で作業します 図、終わり 23ページ 3-4-1 床下の消毒によく使われる消毒剤 ●逆性石けん(ベンザルコニウム塩化物)「オスバンS」が代表的な商品名。 イラストがあります イラスト8 イラスト、終わり ●床下には100~200倍に薄めて噴霧する。 ●原液を手で触らない(P17参照) ※消石灰は取り扱いが難しい(ヤケドなどの危険性がある)ため、逆性石けんでの消毒をお勧めします。逆性石けんは、表示通りに水で薄めたうえで、噴霧器などで吹き付けます。木製部分は逆性石けんの水溶液をしみこませた雑巾を固く絞り、拭くと消毒効果が上がります。 3-5 カビを防ぎ、床下を乾燥させる 3-5-1 消毒用エタノールの塗布 ●床、壁、天井などに消毒用エタノール(80%溶液)をスプレーし、そのまま乾燥させる。 ●家具などに使うときは目立たないところで色落ちしないか確認する。 ●換気をよくし、火気を使わない。 ●壁も水を吸っているので、中を確認する。 ●床下の水分を乾燥させるには最低1ヶ月ほどかかる。 図があります 図17 壁に霧吹きで消毒用エタノールをスプレー 図18 床下の消毒 24ページ (注意!)放っておいた床や壁はこうなる ●浸水した床や壁を放置すると、カビなどが発生し、悪臭のもとになる。  特に断熱材がある場合は、早めに除去する。 ●一見何の被害もなさそうな壁も、中を開くとカビだらけになっていたりする。 図があります 図23 壁をはがすとカビが生えている 図24 水が残って悪臭が発生する 図25 乾燥した汚泥も悪臭の原因に 図26 壁の裏側に生えたカビ 図、終わり 25ページ (注意!)壁の裏の断熱材 ●壁の裏や床下の断熱材は水を吸収しやすいため、放置するとカビが生える。 図があります 図27 水を吸った断熱材 図28 断熱材の取り出し 図、終わり 3-6 電気・水道・ガスが復旧する前に 電気、水道、ガスが復旧する前にはこれらに気をつけましょう。 3-6-1 電気(ブレーカー) ●水害の後にブレーカーが落ちていたら、どこかで漏電しているかもしれないため、電力会社に相談する。 イラストがあります イラスト9 落ちている場所があったら漏電の可能性も イラスト、終わり ●避難などで家を離れるときはブレーカーを切っておく。 3-6-2 水 ●水道復旧直後は水が汚れている場合があるので、しばらく流す。 イラストがあります イラスト10 しばらく流す イラスト、終わり ●井戸水は水質検査が終わるまで飲まない。 ●浄化槽の場合は、トイレや風呂を使う前に業者に点検を依頼する。 3-6-3 ガス ●元の位置から動いてしまったプロパンガスのボンベは、復旧をする前に業者に点検を依頼する。 イラストがあります イラスト11 LP イラスト、終わり 26ページ 4.水害からの生活再建「私の場合」 過去に水害にあった方に、水害後に困ったこと、行ったことをお聞きしました。 4-1 水害直後に困ったことはなんですか? ① 薬を持ち出せず、お薬手帳もなかったが、初めてかかる病院で薬は処方してもらった。お薬手帳は大事。それと、電話帳を持ち出せなかったから誰かに連絡をとろうにも連絡先がわからなくて困った。 イラストがあります イラスト12 おくすり手帳 いつもの病院に行けるとは限らない。 イラスト、終わり  何十万もする着物もかたづけるときに捨てることを勧められて、泣く泣く処分した。帯だけはと思い残しておいたが、結局はカビがでたり異臭がとれなかったりして、処分することを決めた。あきらめるしかないんだけど、誰かに捨てられるのではなく、自分で納得して捨てることができたからよかった。 (茨城県常総市・80代女性・賃貸住宅) ② 困ったのは移動手段と靴。家財と同じく靴も流され、残った靴も海水でズブ濡れで使えるものはなかった。車も浸かり移動手段を奪われ、買い物にも出られなかった。 イラストがあります イラスト13 靴 なによりも欲しかった物のひとつ。 イラスト、終わり  家の中をかたづけた後、家を修理するにも材料がない、大工さんが足りないで、3か月経っても畳が入らない…。冷蔵庫、電池、靴など当座のものを買いに行ってもどこも売り切れ。買いに行ける人はまだいい、行く手段がない人も多かった。  そんななか、周りのもっと大変な状況にある人の手助けを積極的にやっていったところ、それがやりがいになり、自分自身が前向きに考えられるように変わっていった。今振り返ってみると、被災後に一人でふさぎ込んでいたら当分の間は前向きになれなかっただろうと思う。  税や医療費の減免、翌年の確定申告、各種支援制度の申請など、手続きでわからないことはとことん役所の方に聞くことで解決していった。 (山口県宇部市・60代女性・高潮被害) 27ページ 4-2 住まいが決まるまで何をしましたか? ① 自宅再建までに2年かかった。安心して住める場所が決まらないことへのストレスは想像を超えるものだった。被災後の土地探しは自力。なかなか思うような土地が見つからず、住まいの決まらない状況が続いた。 イラストがあります イラスト14 案外ボランティアの方が話しやすいことも イラスト、終わり  自宅再建がなかなか進まないことで家族内がギクシャクしたが、そのことを近所の人には話せない。私の場合は娘に自分の状況を話せたが、そういう相手がいることがとても大切だと感じた。どこでも誰でもいいので、話せる相手を見つけることは心の支えになると思う。 (山口県萩市・50代女性・持家・全壊) ② しばらく親せきの家にお世話になったが、ずっといるわけにもいかず、市が斡旋してくれた公営住宅に入った。公営住宅は無料だったのでその6か月の間に大工さんに頼んで再建した。  市営住宅も最初はよかったが、1か月を越すと色々と大変なことに気づいた。近隣は初めて会う人ばかりだった。建売なども見にいったりもしたが、結局元の家に戻った。ただある程度のお金がないと再建は難しい。市や国からの支援金、見舞金、保険やフェニックス共済(注:兵庫県独自の住宅再建制度)を合わせても足りなかった。(兵庫県丹波市・男性・土砂災害) ③ 不動産屋から連絡があり、同じアパートの2階の空き部屋を勧められて入居した。1階を修理したら元の部屋に戻れると言われていたけど、戻るまでには3か月かかった。家電なんかは自分で買いに行けず、娘や弟が買ってくれた。アパートの2階に移って1か月間くらいはいつも頭がボーっとして家事をする気になれなかった。(茨城県常総市・80代女性・賃貸住宅) ④ もともと自力(DIY)で6年かけて建てた家だから自分で直すと決めていた。避難所には長く世話にはなりたくなかったので、とりあえず離れの一部屋だけ復旧させて避難所を出た。その後もコツコツと家の修復を楽しみながら行った。自分で直しているという満足感も得ながら直したから、気分的に落ち込まずに済んだと思う。(山口県萩市・70代夫婦) 28ページ 4-3 家のかたづけはどうされましたか? ① 被災直後から、かたづけは自分たちだけでやらねばと思っていたが、役所の方からボランティアを勧められた。かたづけにはとにかく人手が必要だったから、ボランティアに来てもらってとても助かった。遠方に住む子が度々かたづけに来てくれたが、物をどんどん捨ててしまうので、選別していないものは子が帰ってから探し出すこともあった。 (山口県萩市・70代夫婦) ② 大まかなかたづけはボランティアさんにやってもらったが、細々とした場所のかたづけや、要不要の選別は家族でしかできない。  市の廃棄物回収にたまたま間に合わなかったことから、要不要の判断をゆっくりすることができた。かたづけには3か月かかったが、近所の方から「アレ、捨てなければよかった」という言葉を聞くこともあり、自分があわてず判断できたことを考えれば、3か月かけてよかったと思う。 (山口県萩市・50代女性・持家・全壊) 4-4 ボランティアを頼んでみてどうでしたか? ① 同じ区の方から「明日ボランティアが入ってかたづけを手伝ってくれる」という情報をもらい、受け入れることになった。ボランティアは学生の団体で、統制もとれていてとても元気があり、近所の人たちみんなが「助かった。若者から元気をもらったよ」と感謝していた。被災した自宅を見て、長期間かけて自分たちでやるしかない、と思っていたところに来てくれたボランティアさんたちのおかげで、大きなもののかたづけも進み、元気までもらうことができたことに感謝している。 (山口県萩市・50代女性・持家・全壊) ② 今思うと、ボランティアとかたづけた時に捨てない方がよかったというものも多かった。家が被災しているので置場もないのだが、住宅再建後、一からそろえるには時間も手間もかかった。先々にどのくらいお金がかかるのか見通しも立たないし、義援金も最初はどのくらいもらえるかわからないので、本当に再建できるか不安だった。 イラストがあります イラスト15 疲れたし、かたづけなきゃ! とあせっていたから処分したけど・・・ 後から買い足すのは大変 イラスト、終わり  ボランティアはよく働いてくれた。集落の人たちも最初はどこからどう手をつけていいかわからなかったけど、 29ページ ボランティアのリーダーが見立ててくれたので助かった。ボランティアとのトラブルはほとんど起きなかったが、一軒に40人が入った時は多すぎて大変だった。 ボランティアがかたづけてくれたことで、「やっぱり戻ってきたい」という気持ちになることができた。(兵庫県丹波市・男性・土砂災害) 4-4 被災後の集落はどうなりましたか? ① 私は自治会長をしていて、自分の集落は38世帯。そのうち全壊が12世帯。被害がなかったのは2世帯だけだった。最初はほとんどの人が集落を出ると話していた。月に1回は集落の集まりがあったが、市営住宅にはバラバラに入っていたので、連絡は大変だった。  ボランティアが集落の土砂をかたづけてくれ、砂防ダム建設の話なども出てきたので、6か月たったころから残りたいという話が多く出るようになった。結局、37世帯が残って再建を選択した。 (兵庫県丹波市・男性・土砂災害) 4-5 農家の場合 ① 少しばかりの田んぼをやっていて、被災後主人が少しだけ手を入れたら、被災の認定がされなくなってしまい、一切の補償が得られなかった。手をつける前に農協や保険会社に問い合わせればよかった。「わからないことはどんどん聞いていい」ということをこれから被災した人には声を大にして伝えたい。(山口県萩市・50代女性・持家・全壊) ② 8棟のビニールハウスすべてが流され、フェンスに絡まっている状態を見て涙がこぼれた。今年の収穫がすべてなくなったことを受け入れるのには時間がかかった。  ボランティアセンターのスタッフが「農地の被害にも何らかの補償や支援制度があるので市役所に相談して、査定が終了してからかたづけましょう」と声をかけてくれた。  うちは今でも査定待ちで手がつけられない状態。だけど、地域の中はボランティアの力もあってどんどんかたづけられていったから、なんとなく取り残された感じがしている。そんな中で「あそこの家は補償金を釣り上げる為にワザとかたづけないらしい」という、心ない噂に苦しめられた。本当は行政からの連絡を待っているだけなのに。(栃木県鹿沼市・農家) 30ページ ③ 稲刈り前後の米は状態によって補償が全く違うことを今回初めて知った。刈り取りが済んでいない米は共済の対象だけれど、収穫したら補償は一切ない。一方、農協に出荷してしまえば農協の責任になるが、その前の検査前の米も補償の対象外だった。一年に一度しか収穫できない農家にとってこれは無収入ということ。今回は国の営農再開支援事業で補助してもらった。  翌年の作付けをするためには、春までに広大な田んぼのゴミを取り除いてから土砂撤去の工事をしなくてはならなかった。常総ではそのために市とボランティアセンター、地元農家が協力して農地のゴミ拾いを延べ17、8回行った。300人もの人が並んで田んぼのゴミを拾っている姿を見て希望がわいた。 (茨城県常総市・農家(米・麦・大豆)) 水害にあったときに参考になる情報を集めています。 以下もあわせてご活用ください。 ●水害後の家屋への適切な対応/震災がつなぐ全国ネットワーク https://shintsuna.org/img/tools/suigai_appendix.pdf QRコードがあります。 ●浸水した家屋の片づけと掃除のしかた /NHK・協力:震災がつなぐ全国ネットワーク https://www3.nhk.or.jp/news/special/suigai/videos/5706/ QRコードがあります。 31ページ ■参考文献  内閣府(防災担当)災害に係る住家の被害認定基準運用指針  第一法規 弁護士のための水害・土砂災害対策QA(2015)  たすけあいセンターJUNTOS!通信No.20(2016) ■監修  鍵屋  一《かぎや はじめ》  (跡見学園女子大学教授・一般社団法人福祉防災コミュニティ協会代表理事) ■協力  岡本  正《おかもと・ただし》(銀座パートナーズ法律事務所弁護士)  弘中 秀治《ひろなか・しゅうじ》(宇部市役所)  茨城県常総市  丹波市社会福祉協議会(兵庫県)  萩市社会福祉協議会(山口県)  永野 海《ながの・かい》(中央法律事務所 弁護士) ※第6版より イラスト 山田  光《やまだ・ひかる》 写真提供 風組関東《かぜぐみかんとう》・中村真菜美《なかむら・まなみ》・レスキューストックヤード 震災がつなぐ全国ネットワーク水害対応マニュアルワーキンググループ 小林 直樹《こばやし・なおき》(風組関東) 横田 能洋《よこた・よしひろ》(茨城NPOセンター・コモンズ) 渡辺日出夫《わたなべ・ひでお》(ADRA Japan) 頼政 良太《よりまさ・りょうた》(被災地NGO恊働センター) 柴田 貴史《しばた・たかし》(とちぎボランティアネットワーク) 松山 文紀《まつやま・ふみのり》(震災がつなぐ全国ネットワーク事務局長) 松田 曜子《まつだ・ようこ》(震災がつなぐ全国ネットワーク共同代表・長岡技術科学大学) ※( )内の所属は初版発行当時 原本奥付  この手引き「水害にあったときに」には最初に必要な手続きや作業を簡単に説明した「チラシ版」もあります。下記のホームページ、または連絡先までお問い合わせください。 作成:震災がつなぐ全国ネットワーク  (認定特定非営利活動法人レスキューストックヤード内)  461-0001 名古屋市東区泉1-13-34 名建協2階  TEL.052-253-7550 FAX.052-253-7552  震つな公式アドレス office@shintsuna.org  震つなブログ http://blog.canpan.info/shintsuna/ ※本手引きは日本財団活動助成によって作成されました。 日本財団のロゴ 第1版 発行:2017年03月 第8版 発行:2022年09月 ※ワード版は、南池袋二三四《ふみよ》町会への「令和4年度東京都地域の底力発展事業助成」により作成されました。 水害にあったときに221127.docx --- p.1